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戦争関連本の紹介



「サムライ索敵機 敵空母見ゆ」
ところでこの本は、とにかく面白い。
僕がいままで読んだ戦記の中で、トップ3に入る。
日本の戦記の悪いところは、建前を並べているところ。

この本は、著者の体験で書いていて、しかも著者はもともとかなり頭がいい人。
何かの拍子で、大学にも海軍兵学校にも行かず、下っ端の飛行機乗りになった。

だから、日本海軍を下のほうから批判するスタンスがある。
しかも、太平洋戦争のすべての時期を、索敵機を操縦してきた。
さて、「1945年8月15日、太平洋戦争は終わった」という表現が一般的に使われる。
正式な戦争終了は、戦艦ミズーリ艦上での対連合国降伏文書への調印があった9月2日だ。

しかし、連合国軍と日本軍は8月15日の玉音放送があった日に、戦闘を停止した。
僕が思うのは、8月15日の戦闘停止後、宇垣纏中将が11機の彗星艦爆に乗った22人の若者を道連れにした「私兵特攻」だね(不時着機もあったようだ)。

著者の安永氏は、宇垣長官が特攻に出るところを目撃している。

『宇垣長官が今になって飛び出すのは、陛下のご意向に反してまで戦争を続けようというほどの大それた意図ではなく、立場上死ななければならないので、部下搭乗員どもにお伴をさせて死にに行くのだ。拳銃自殺よりは航空艦隊の長官らしくパッとした花道が欲しいのだ』

『年寄りだから一人で死ぬのが恐いのだろう』

(ともに437ページ)

戦闘が終わったのに、これからの日本を背負う若者22人を道連れにしたわけだ。
僕は、8月15日になると、宇垣長官の私兵特攻があったことを考えるね。


終戦間際に、パナマ運河攻撃を計画した、伊号400潜水艦乗り組み、晴嵐搭乗員の手記。
いつもながら、日本海軍の士官と下士官の対立、上層部の無能さがわかる。

興味深かったのは、マレーシアのペナン島の潜水艦基地に、ドイツのUボートが10隻ほどいて、一緒にインド洋の通商破壊戦をやっていたという話。
また、伊号37潜水艦でインド洋で商船を沈めたとき、命令によって乗組員を殺したこと、これが終戦時には問題視されていたこと。

高橋氏は、なんと、潜水艦搭載の小型水上機で、インド洋のチャゴス環礁、マダガスカルのディエゴスワレス港(現、アンツィラナナ)、アフリカのモンバサまで偵察した。
戦争という状況を考えなければ、大冒険物語だね。